小口現金とは?定額資金前渡法における取引の流れと仕訳の方法

小口現金とは?定額資金前渡法における取引の流れと仕訳の方法 アイキャッチ

企業は、盗難や損失に備えて当座預金口座を開設するなどして、銀行に預金をしています。

ですが、日々の営業活動の中で、切手やハガキ、文具、従業員の交通費など少額の支払取引が生じるため、手許にある程度の現金を用意しなければなりません

このような少額の支払いに備えて、企業内に用意しておく現金を小口現金といいます

小口現金は、現金と同じく資産増加したら借方に仕訳します

資産のホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産負 債
資 本
増えたら借方減ったら貸方

まず、小口現金取引における登場人物をおさえましょう

  • 会計係 … 企業の預金などのお金を管理し、仕訳や転記をする人
  • 用途係 … 会計係から小口現金を預かり、管理する人
なずな
なずな

仕訳や転記をするのは会計係というのがポイントです

定額資金前渡法の流れは下のイラストのようになります

① 会計係は一定額を用途係に渡す

これは、週1回や月1回など定期的に行われ、会計係は仕訳・転記といった会計処理を行います

② 用途係は日々の支払内容をノートに書く

用途係は小口現金から日々の支払いを行い、小口現金出納帳というノートに内容を書きます

これは仕訳や転記といったものではなく、あくまでメモ書きのような役割です

③ 報告を受け、使った分を補給する

①と同様、週1回や月1回など定期的に用途係から報告を受け、使った金額だけ補給し、会計係は仕訳・転記といった会計処理を行います

なずな
なずな

会計係は

  1. 小口現金を渡した時
  2. 報告を受け補給した時
    に仕訳や転記を行います

補給は、報告の翌日以降にする場合もあれば、即日補給する場合もあります

このように、小口現金の金額を決めておき、使った分だけ補給する方法を定額資金前渡法(インプレスト・システム)といいます

会計係が用途係に前渡した時の仕訳

次の例題をみてみましょう

5/1
会計係は、インプレスト・システム(定額資金前渡法)を採用し、小口現金1,000円を小切手を振り出して、用途係に前渡した

小口現金資産)を渡したので増やします

小口現金 up を見る
小口現金資産)の
ホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産 負 債
資 本
増えたら借方 減ったら貸方

仕訳と勘定への転記は次のようになります

日 付借方科目金 額貸方科目金 額
5/1小口現金
資産+
1,000当座預金
資産ー
1,000
小口現金当座預金
5/1 当座預金 1,0005/1 小口現金1,000

貸方は当座預金(資産)を減らします

当座預金 down を見る
当座預金資産)の
ホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産 負 債
資 本
増えたら借方 減ったら貸方

復習しよう
当座預金取引の流れと小切手を振り出した時の仕訳

用途係が小口現金から支払った時

次の例題をみてみましょう

5/15
用途係は、バス代500円と切手代300円を小口現金から支払った

仕訳なし

なずな
なずな

用途係は、この取引があったことを記録するため、小口現金出納帳に記入しますが、これは仕訳ではなくメモ書きのようなものです

支払いの報告と小口現金の補給の仕訳

小口現金の補給のタイミングには、次の2つのケースがあります

  1. 報告を受け、後日補給する場合
  2. 報告と同時に補給する場合

それぞれの仕訳を見ていきましょう

1. 報告を受け後日補給する場合

① 報告を受けた時

5/31
会計係は、用途係から次のような支払い報告を受けた

・バス代500円
・切手代300円

報告を受けたので、
小口現金資産)を減らします

小口現金 down を見る
小口現金資産)の
ホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産 負 債
資 本
増えたら借方 減ったら貸方

仕訳と勘定への転記は次のようになります

日 付借方科目金 額貸方科目金 額
5/31旅費
交通費
費用+
500小口現金
資産ー
800
通信費
費用+
300
バス代は旅費交通費、切手代は通信費
どちらも費用です
旅費交通費小口現金
5/31 小口現金 5005/31 諸口 800
通 信 費旅費交通費通信費
5/31 小口現金 300

小口現金貸方に仕訳して減少させます

② 補給した時

翌日、会計係は用途係に小切手800円を振り出して、小口現金を補給した

補給したので、
小口現金資産)を増やします

小口現金 up を見る
小口現金資産)の
ホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産 負 債
資 本
増えたら借方 減ったら貸方

仕訳と勘定への転記は次のようになります

日 付借方科目金 額貸方科目金 額
6/1小口現金
資産+
800当座預金
資産ー
800
小口現金当座預金
6/1 当座預金 8006/1 小口現金 800

貸方は当座預金(資産)を減らします

当座預金 down を見る
当座預金資産)の
ホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産 負 債
資 本
増えたら借方 減ったら貸方

2. 報告と同時に補給する場合

・報告を受け、ただちに補給した時

5/31
会計係は、用途係から次のような支払い報告を受け、ただちに小切手を振出し小口現金を補給した

・バス代500円
・切手代300円

報告と当時に即日補給した場合は、上の「報告を受けた時」と「補給した時」の2日分の仕訳を1つにまとめる形になります

そうすると小口現金が借方と貸方の両方に出てくるので省略します

日 付借方科目金 額貸方科目金 額
5/31旅費
交通費
費用+
500小口現金
資産ー
800
通信費
費用+
300
小口現金
資産+
800当座預金
資産ー
800

よって 5/31 の仕訳はと勘定への転記は次のようになります

日 付借方科目金 額貸方科目金 額
5/31旅費
交通費
費用+
500当座預金
資産ー
800
通信費
費用+
300
旅費交通費当座預金
5/31 当座預金 5005/31 諸口 800
通 信 費旅費交通費通信費
5/31 当座預金 500

定額資金前渡法による小口現金勘定

定額資金前渡法による小口現金勘定は、下のようになります

小口現金
(増えたら借方
① 前渡額② 支払報告額
③ 補給額①の額に戻る
なずな
なずな

使った分だけ補給するので、残高は前渡額に戻ります


【確認問題】

仕訳してみましょう

会計係は、インプレスト・システム(定額資金前渡法)を採用し、用途係に小口現金2,000円を、現金で前渡した  

解答を見る
借方科目 金 額 貸方科目 金 額
小口現金 2,000 現金 2,000
小口現金(資産)の増加を借方に
現金(資産)の減少を貸方に仕訳する
資産のホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産 負 債
資 本
増えたら借方 減ったら貸方

用途係は、消耗品費800円と切手代80円を小口現金から支払った

解答を見る
借方科目 金 額 貸方科目 金 額
仕訳なし
用途係の支払いは仕訳しません

会計係は、用途係から上記の支払い報告を受け、ただちに現金を渡し小口現金を補給した

解答を見る
借方科目 金 額 貸方科目 金 額
消耗品費 800 現金 880
通信費 80
消耗品費(費用)の増加と
通信費(費用)の増加を借方に
現金(資産)の減少を貸方に仕訳します
費用のホームポジション
借 方      P/L      貸 方
費 用 収 益
利 益
増えたら借方 減ったら貸方
資産のホームポジション
借 方      B/S      貸 方
資 産 負 債
資 本
増えたら借方 減ったら貸方
しっかりおさえよう!
  • インプレスト・システムでは、支払い報告の金額と補給金額は同額になる
  • 用途係が支払った時は仕訳なしとなる
  • 借方と貸方に同じ勘定科目が仕訳されると省略できる

コメント